和歌山の親戚の家や、地元の人との食事の席で「ほら、食べよし」と言われたことはありませんか。
やさしくすすめられたのか、早く食べろと急かされたのか。意味がはっきりせず、どう返せばよいか迷った方も多いはずです。
結論から言うと、「食べよし」は和歌山弁で「食べなさい」「食べたら?」という意味です。実はこの言葉、京都の言葉として知られていますが、和歌山でも同じ形で使われています。しかも和歌山の「よし」には敬意がほとんど含まれないとされ、京都のイメージで受け取ると少しずれます。
この記事では、食べよしの意味、2つのニュアンスの聞き分け方、活用と例文、京都弁との違い、返し方までを順に整理します。最後の「よくある質問」には、目上の人に使えるかどうかの答えも載せています。
「食べよし」は叱る言葉というより、世話を焼く言葉です。文字で見ると命令に見えますが、和歌山では語尾をやわらかく伸ばして言うことが多く、聞き分けの決め手は言葉そのものより声の調子です。
食べよしの意味は「食べなさい・食べたら?」|和歌山弁の基本
食べよしは、相手に食べることをすすめる和歌山弁です。共通語に直すと「食べなさい」または「食べたら?」になります。

言葉の形は「食べ」+「よし」です。動詞に「よし」を付けて、相手に何かをするよう促します。「よし」は「良い」の意味ではなく、「〜しなさい」にあたる文末の言葉です。「食べて良し」という許可の意味ではないので、ここを取り違えないようにしてください。
和歌山弁(紀州弁)は、大きく紀北・紀中・紀南に分かれます。和歌山県の公式サイト「和歌山県文化情報アーカイブ『和歌山の方言』」では、県の調査をもとにした方言の会話文や、地域別・50音順の方言集が音声付きで公開されています。文字だけでは伝わりにくい抑揚を確かめたい方は、あわせて聞いてみてください。
食べよしの基本情報(意味・使う相手・共通語訳)
| 言葉 | 食べよし(たべよし) |
|---|---|
| 意味 | 食べなさい/食べたら? |
| 形 | 動詞「食べる」の「ます」を取った形(食べ)+「よし」 |
| ニュアンス | やさしくすすめる場合と、少し強めに促す場合の2通り |
| 敬意 | ほとんどない(敬語ではない) |
| 使う相手 | 家族・友人・年下の相手 |
| 同じ形を使う地域 | 和歌山のほか、京都でも使われる |
| 語源 | 公的な資料では確認できず(要確認) |
| 参考 | 和歌山県文化情報アーカイブ「和歌山の方言」 |
食べよしの2つのニュアンス|すすめる意味と命令の意味の聞き分け方
食べよしには「食べたら?」という提案と、「食べなさい」という命令の2通りの意味があり、場面と声の調子で決まります。同じ言葉でも、言い方ひとつで受ける印象が変わります。

やさしくすすめる「食べよし」
料理やお菓子を出しながら言う「食べよし」は、ほぼ「どうぞ食べて」の意味です。「遠慮せんと食べよし」「ようけあるさけ食べよし」のように、遠慮している相手の背中を押す場面でよく使われます。語尾を「食べよしよ」「食べよしぃ」とやわらかく伸ばすと、すすめる気持ちがさらに強く出ます。
少し強めに促す「食べよし」
「はよ食べよし」「ちゃんと食べよし」のように、「早く」「ちゃんと」が付くと命令に近づきます。親が子どもに言う「宿題しよし」「はよ寝よし」と同じ使い方です。ただし、「食べろ」のような突き放した響きではなく、相手を気づかう気持ちが残る言い方です。きつく聞こえても、怒られていると決めつけなくて大丈夫です。
聞き分けの目安
| 手がかり | すすめる意味 | 命令に近い意味 |
|---|---|---|
| 場面 | 食べ物を出されたとき・遠慮しているとき | 食事が進まないとき・時間がないとき |
| 一緒に出る言葉 | 「遠慮せんと」「ようけあるさけ」 | 「はよ」「ちゃんと」「残さんと」 |
| 声の調子 | 語尾がやわらかく伸びる | 語尾が短く切れる |
| 共通語訳 | 食べたら?/どうぞ食べて | 食べなさい |
「〜よし」の使い方|食べよし以外の活用と例文
「〜よし」は食べる以外の動詞にも付きます。作り方は、動詞の「ます」を取った形に「よし」を付けるだけです。
| 和歌山弁 | 共通語 | 元の動詞 |
|---|---|---|
| 食べよし | 食べなさい/食べたら? | 食べる |
| 寝よし | 寝なさい | 寝る |
| 聞きよし | 聞きなさい | 聞く |
| しよし | しなさい | する |
| 宿題しよし | 宿題しなさい | 宿題する |
| あがでしよし | 自分でしなさい | する |
「あがでしよし」の「あが」は「自分」を指す和歌山弁です。一人称の言い方はあがらの意味の記事でくわしく解説しています。
食べよしを使った例文
- 「みかんようけもろたんよ。食べよし」=みかんをたくさんもらったの。食べたら?
- 「冷めるで。はよ食べよし」=冷めるよ。早く食べなさい。
- 「遠慮せんと食べよしよ」=遠慮しないで食べてね。
- 「野菜もちゃんと食べよし」=野菜もちゃんと食べなさい。
例文は言葉の形を示すための作例です。実際の抑揚は地域や世代で違うため、耳で確かめるのがいちばん確実です。
食べよしと似た和歌山弁の違い|食べよら・食べよそーとの使い分け
和歌山弁には、食べることをすすめる言い方が食べよしのほかにもあります。違いは「相手だけにすすめるのか、自分も一緒に食べるのか」です。

和歌山弁では、誘うときに「ら」を付けて「行こら(行こうよ)」のように言います。食べる場合は「食べよら」で、「食べよし」は相手にすすめる言葉、「食べよら」は一緒に食べようと誘う言葉です。また紀北には、促す意味の「そー」を付けた「はよ食べよそー」という言い方もあります。
| 言い方 | 意味 | 食べるのは誰か |
|---|---|---|
| 食べよし | 食べなさい/食べたら? | 相手 |
| 食べよら | 食べようよ | 自分と相手 |
| はよ食べよそー | 早く食べようよ(促す) | 自分と相手 |
「いこら」のような誘いの「ら」は、和歌山市の学校サイトで公開されている和歌山弁の紹介資料にも、「出来やん(できない)」や、ざ行がだ行に変わる発音とあわせて取り上げられています。語尾や単語をまとめて知りたい方は和歌山弁一覧をどうぞ。
食べよしは京都弁?和歌山弁との違いと共通点
食べよしは京都でも使われる言葉で、和歌山だけの方言ではありません。形と基本の意味は共通で、違いは言葉の位置づけにあります。

京都の「〜よし」は、「はよお風呂入りよし」「見よし」のように、目下や同じ立場の相手に軽くすすめる言い方として知られています。強い命令ではなく「食べたらいいよ」ぐらいの感覚で、女性がよく使う言葉とも言われます。
和歌山の「よし」も、すすめと軽い命令の両方に使う点は同じです。一方で、和歌山弁はもともと敬語にあたる言葉が少ない方言とされ、「よし」にも敬意はほとんどないと説明されています。上品な京ことばのイメージで「丁寧に言ってくれた」と受け取るより、「身内として気さくに声をかけてくれた」と受け取るほうが実感に近いです。
| 項目 | 和歌山 | 京都 |
|---|---|---|
| 形 | 食べよし・しよし | 食べよし・しよし |
| 基本の意味 | 食べなさい/食べたら? | 食べなさい/食べたらいいよ |
| 使う相手 | 家族・友人・年下 | 目下・同じ立場の相手 |
| 並んで使う言い方 | 食べよら・食べよそー | — |
命令の言い方が地域でどう違うかは、国立国語研究所の『方言文法全国地図』で調べられます。第5集には「起きろ(やさしく)」「起きろ(きびしく)」など、やさしい命令ときびしい命令を分けた地図が収められており、全国の分布を見比べられます。なお、「よし」の語源は確認できる公的な資料が見つからなかったため、この記事では断定していません。
食べよしと言われたときの返し方と、使うときの注意点
食べよしと言われたら、お礼を添えて素直に受けるのがいちばん自然です。自分で使うときは、相手との関係だけ気をつけてください。

言われたときの返し方
- 受けるとき:「ありがとう、いただきます」「おおきに、よばれるわ」
- 断るとき:「おおきに。もうお腹いっぱいやわ」
- 急かされたとき:「今食べるよ」「すぐ食べるわ」
「よばれる」は「ごちそうになる」という意味で、関西で広く使われる言い方です。和歌山の家庭では、みかんや梅干し、お菓子を次々にすすめられることがあります。断るときも、お礼を先に言えば失礼にはなりません。
自分で使うときの注意点
食べよしは敬語ではないため、目上の人やお客さまには使わないのが基本です。上司や取引先、初対面の年長者には「どうぞ召し上がってください」と共通語で伝えましょう。反対に、友人や家族、子どもに使うと、距離の近さが伝わるあたたかい言い方になります。
県外の方が旅先で無理に使う必要はありません。意味がわかれば、すすめてくれた相手の気持ちを受け取りやすくなります。それだけで会話はぐっと楽になります。
食べよしとあわせて読みたい和歌山弁の記事
食べよしの意味がわかったら、ほかの和歌山弁にも触れてみてください。会話の中で出会う言葉がつながって聞こえるようになります。

すすめられることの多い梅やみかんのお菓子は、和歌山お土産ランキングで紹介しています。
よくある質問
「食べよし」は和歌山弁でどういう意味ですか?
「食べなさい」「食べたら?」という意味です。動詞に「よし」を付けて相手に行動をすすめる言い方で、やさしくすすめる場合と、少し強めに促す場合の両方に使われます。どちらの意味かは声の調子と場面で判断します。
「食べよし」は敬語ですか?目上の人に使えますか?
敬語ではありません。和歌山の「よし」には敬意がほとんどないとされ、家族や友人、年下の相手に使う言い方です。目上の人やお客さまには「食べてください」「どうぞ召し上がってください」と共通語の丁寧な表現を使うのが無難です。
「食べよし」は京都弁ではないのですか?
京都でも「食べよし」「行きよし」のように使われ、京ことばとして広く知られています。同じ形が和歌山でも使われており、どちらか一方だけの言葉ではありません。和歌山では「食べよら」「食べよそー」など別のすすめ方と並んで使われる点が特徴です。
「食べよし」と言われたら、どう返せばよいですか?
すすめてくれた気持ちへのお礼を添えて「ありがとう、いただきます」と返せば十分です。和歌山弁で返すなら「おおきに、よばれるわ」という言い方もあります。断るときも「おおきに、もうお腹いっぱいやわ」とお礼を先に言うと角が立ちません。
「〜よし」は食べる以外の動詞にも使えますか?
使えます。「寝よし(寝なさい)」「聞きよし(聞きなさい)」「宿題しよし(宿題しなさい)」「あがでしよし(自分でしなさい)」のように、動詞の「ます」を取った形に「よし」を付けます。
まとめ|食べよしは和歌山弁の気さくな「食べなさい」
- 食べよしの意味は「食べなさい」「食べたら?」。「よし」は「良い」ではなく「〜しなさい」にあたる言葉です。
- やさしいすすめと軽い命令の2通りがあり、場面と声の調子で聞き分けます。
- 「寝よし」「聞きよし」「しよし」のように、ほかの動詞にも付きます。
- 京都でも使う言葉ですが、和歌山の「よし」に敬意はほとんどなく、目上の人には使いません。
- 言われたら「ありがとう、いただきます」と受ければ十分です。
次は和歌山弁一覧で、語尾の「〜やしてよ」などもあわせて確かめてみてください。




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