「ひやこい」と言われて、意味をすぐに答えられますか。
和歌山の家族や同僚が口にしたのを聞いて「たぶん冷たいという意味だろう」と見当はついても、本当に和歌山弁なのか、どんな場面で使うのかまで聞かれると自信がなくなる方は多いはずです。
実は「ひやこい」は和歌山だけの言葉ではなく、京都や大阪の方言集にも載っています。さらに国語辞典をたどると、江戸時代の文献に出てくる「ひやっこい」のもとになった形だと説明されています。
この記事では、ひやこいの意味、使われる地域、語の成り立ち、使い方の例文、似た和歌山弁までを辞書・公的資料で確認できた範囲で整理します。最後に、県外の人に説明するときにそのまま使える早見表も用意しました。
地元民のひとこと:「ひやこい」は、方言だと気づかれにくい和歌山弁のひとつです。意味は「冷たい」で、まずは水や飲み物など温度の話に使う言葉だと覚えておけば十分です。
ひやこいの意味は「冷たい」|和歌山弁の結論を先に
ひやこいの意味は、共通語の「冷たい」です。まず結論と根拠を確認します。

「ひやこい」=「つめたい」です。辞書サイトのWeblioに収録されている「和歌山弁辞書」では、ひやこいの意味が「つめたい」と記されています。和歌山弁の語彙を品詞別に集めた語彙集「和歌山弁エクスプローラ」の形容詞編でも、同じく「つめたい」とされています。
ひやこいの品詞と対象
ひやこいは、ものの性質を表す形容詞です。国語辞典では、もとになる語の説明として「ひやりとする」「つめたい」「ひえた状態である」といった語釈が並んでいます。つまり基本は温度が低いことを表す言葉です。
「あの人は冷たい」のように人の態度を表す使い方については、今回確認した辞書・方言集に記載がありませんでした。本記事では温度の意味に限って説明します。
ひやこいの意味を一言で伝えるなら
県外の方に聞かれたら「冷たいの和歌山弁で、関西の広い範囲で使う言い方」と答えるのが正確です。理由は次の章で説明します。
ひやこいは和歌山だけの方言ではない|京都・大阪でも使う言葉
ひやこいは、和歌山弁であると同時に、京都や大阪の方言としても記録されている言葉です。

Weblioで「ひやこい」を引くと、3つの方言辞書に項目があります。内容を表にまとめました。
| 収録されている辞書 | 意味の記載 | 補足 |
|---|---|---|
| 和歌山弁辞書 | つめたい | ― |
| 大阪弁 | つめたい | 「ひやこい」「ひやっこい」「ひゃっこい」の形を併記。「ひやい」に「こい」がついた語と説明 |
| 京ことば | 冷たい | ― |
3つとも意味は同じです。「ひやこい」は和歌山固有の語というより、近畿で共有されてきた言い方だと分かります。
ひやこいが「和歌山弁」と呼ばれる理由
和歌山県の方言は一般に「紀州弁」「和歌山弁」と呼ばれ、近畿方言の一部に位置づけられています。県内は紀北・紀中・紀南に分けて説明されることが多く、地域ごとに語彙や言い回しが異なります。
ひやこいは、その和歌山のことばの中で日常的に使われてきた語のひとつです。大阪や京都と共通していても、和歌山で使われている以上「和歌山弁」と呼んで差し支えありません。
なお、県内のどの地域でどの程度使われているかを示す公的な調査結果は、今回は確認できませんでした。地域差については断定を避けます。
ひやこいの語源と成り立ち|「ひやっこい」のもとの形
ひやこいの成り立ちは、国語辞典の「ひやっこい」の項目から読み取れます。

コトバンクに収録されている国語辞典では、「冷っこい(ひやっこい)」が次のように説明されています。
- デジタル大辞泉:「ひやこい」の音変化。意味は「ひやりとする。つめたい」。用例は「―い水」
- 精選版 日本国語大辞典:「ひやこい」の変化した語で、「ひゃっこい」ともいう。意味は「ひややかである。ひえた状態である。つめたい」
つまり辞書の説明では、「ひやこい」が先にあり、そこから「ひやっこい」「ひゃっこい」が生まれたという関係です。和歌山で使われる「ひやこい」は、変化する前の形にあたります。
ひやこいの仲間は江戸時代の文献にも登場
精選版 日本国語大辞典は「ひやっこい」の用例として、1667年の俳諧『やつこはいかい』と、1809〜13年の滑稽本『浮世風呂』を挙げています。『浮世風呂』では、冷たい水をかけられた場面で「ひやっこい」と声を上げる用例が引かれています。
同じ辞典には、冷水売りの呼び声としての「ひやっこい」も載っています。冷たい水を表す言葉として、古くから暮らしの中で使われてきたことがうかがえます。
ひやこいの「こい」とは
Weblio収録の大阪弁の項目では、ひやこいを「ひやい」に「こい」がついた語と説明しています。「こい」の細かな由来については、今回確認した資料に説明がなかったため、本記事では踏み込みません。
辞書の原文はコトバンク「冷っこい」で確認できます。
ひやこいの使い方と例文|活用の早見表つき
ひやこいは「冷たい」と同じ位置に置いて使えます。ここでは場面別の例文を紹介します。

ひやこいの例文(作例)
| 場面 | 和歌山弁の作例 | 共通語にすると |
|---|---|---|
| 飲み物 | このお茶、よう冷えてひやこいわ | このお茶、よく冷えていて冷たいよ |
| 川や海の水 | 川の水、まだひやこいで | 川の水はまだ冷たいよ |
| 手や足 | 手ぇひやこいなあ | 手が冷たいね |
| 床や風 | 床がひやこいさけ、靴下はいとき | 床が冷たいから、靴下をはいておきなさい |
いずれも「冷たい」を「ひやこい」に置き換えただけの形です。意味が分かれば、聞き取るのは難しくありません。
ひやこいの活用(作例)
形容詞なので「冷たい」と同じように形が変わります。下の表も作例で、関西の形容詞の一般的な形に沿って並べたものです。
| 形 | ひやこい | 共通語 |
|---|---|---|
| 言い切り | ひやこい | 冷たい |
| 過去 | ひやこかった | 冷たかった |
| 否定 | ひやこない | 冷たくない |
| 名詞の前 | ひやこい水 | 冷たい水 |
辞書で確認できた形は「ひやこい」「ひやっこい」「ひゃっこい」の3つです。活用形の細かな地域差は、資料では確認できていません。
ひやこいを使うときの注意
県外の相手には通じないことがあります。仕事のメールや公的な文書では「冷たい」と書くのが無難です。会話の中で意味を聞かれたら「冷たいって意味やで」と添えれば伝わります。
ひやこいと似た和歌山弁|「〜こい」で終わる形容詞
和歌山弁には、ひやこいと同じく「〜こい」で終わる形容詞がいくつかあります。

語彙集「和歌山弁エクスプローラ」の形容詞編には、ひやこいと並んで次の語が載っています。
| 和歌山弁 | 意味 |
|---|---|
| ひやこい | つめたい |
| こまこい | 細かい |
| やらこい | 柔らかい |
| しなこい | 硬い(特に食べ物について) |
「こまこい」「やらこい」は、共通語の「細かい」「柔らかい」と形が近く、初めて聞いても意味を推測しやすい語です。ひやこいも「冷や」が入っているため、知らなくても見当がつきやすい和歌山弁だといえます。
和歌山市の資料に残る地区ごとの方言
和歌山のことばは、同じ市内でも地区によって違います。和歌山市が公開している和歌の浦周辺のまち歩きマップには、雑賀崎と田野の方言が地区別に紹介されています。
- 雑賀崎:「はえたえないの」(ごくろうさまやの/ねぎらいの言葉)、「おっかいよ」(あれまあ)、「あんにゃん」(お兄さん)
- 田野:「あったらもん」(もったいない)、「おうらい」(沢山)、「づつない」(お腹いっぱい)、「だんない」(かまわない)
このマップに「ひやこい」は載っていませんが、漁港の集落ごとに言葉が違うことが分かる資料です。詳しくは和歌山市のまち歩きマップ(PDF)をご覧ください。
和歌山弁を一覧で確認したい方は和歌山の方言一覧も参考になります。
ひやこいのような方言が各地で違う理由
「冷たい」ひとつをとっても地域で言い方が違うのは、言葉の広がり方と変化の仕方に理由があります。
国立国語研究所の「ことば研究館」では、方言が生まれる要因として次の2つを挙げています。
- 言葉の伝わり方の差:中央で生まれた新しい言葉が地方へ広がるとき、届く時期に差が出る
- 地域ごとの独自の変化:それぞれの土地で言葉が独立して変わっていく
辞書の説明では「ひやこい」から「ひやっこい」「ひゃっこい」が生まれました。同じ語でも、もとの形を使い続ける地域と、変化した形が広まった地域がある、と考えると分かりやすくなります。ただし、和歌山でなぜ「ひやこい」の形が使われているのかを直接説明した資料は確認できていないため、ここでは一般的な仕組みの紹介にとどめます。
解説の全文は国立国語研究所 ことば研究館「日本語には、どうしていろいろな方言があるのですか」で読めます。
ひやこいの基本情報まとめ表
ここまでの内容を、人に説明するときに使える早見表にまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 語 | ひやこい(冷やこい) |
| 意味 | つめたい(温度が低い) |
| 品詞 | 形容詞 |
| 方言辞書での扱い | 和歌山弁・大阪弁・京ことばの各辞書に収録(Weblio) |
| 関連する形 | ひやっこい、ひゃっこい(国語辞典では「ひやこい」が変化した語と説明) |
| 古い用例 | 「ひやっこい」の形で1667年の俳諧、1809〜13年の『浮世風呂』(精選版 日本国語大辞典) |
| 県内の地域差・使用率 | 要確認(公的な調査結果は未確認) |
| 例文 | 本記事の例文はすべて作例 |
ひやこいとあわせて読みたい和歌山弁の記事
ひやこいの意味が分かったら、ほかの和歌山弁にも目を通すと会話がぐっと聞き取りやすくなります。
よくある質問
ひやこいは和歌山弁でどういう意味ですか?
「冷たい」という意味です。Weblioに収録されている和歌山弁辞書で「つめたい」と説明されています。水や飲み物など、温度が低いものに使う形容詞です。
ひやこいは和歌山だけの方言ですか?
和歌山だけではありません。同じWeblioの大阪弁・京ことばの辞書にも「ひやこい」が載っており、意味はいずれも「冷たい」です。
ひやこいと「ひやっこい」はどう違いますか?
意味は同じです。デジタル大辞泉と精選版 日本国語大辞典では、「ひやっこい」は「ひやこい」が変化した語と説明されています。
ひやこいは人の性格が冷たいときにも使えますか?
今回確認した辞書・方言集には、温度の冷たさ以外の意味は載っていませんでした。態度や性格については「冷たい」と言うほうが誤解がありません。
ひやこいを使った例文はありますか?
作例として「このお茶、よう冷えてひやこいわ」(このお茶、よく冷えていて冷たいよ)が挙げられます。本記事の例文は辞書の用例ではなく、意味を伝えるための作例です。
まとめ|ひやこいは「冷たい」を表す和歌山弁
- ひやこいの意味は「冷たい」。温度が低いものに使う形容詞
- 和歌山弁辞書のほか、大阪弁・京ことばの辞書にも載る近畿共通の言い方
- 国語辞典では「ひやっこい」「ひゃっこい」のもとになった形と説明されている
- 「ひやっこい」の用例は1667年の俳諧までさかのぼる
- 県外の相手や文書では「冷たい」と言い換えるのが無難
次は和歌山弁の一覧で、ほかの言葉の意味も確認してみてください。




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