シャツのボタンを掛け違えたとき、家族に「それ、ぐいちになってるで」と言われたことはありませんか。
県外の人に同じように言って「ぐいちって何?」と聞き返され、和歌山弁だったのかと気になって検索した方も多いはずです。
実は「ぐいち」は漢字で「五一」と書き、国語辞典に載っている言葉です。江戸時代の浄瑠璃にも出てくる、さいころ由来の古い言い回しでした。
この記事では、ぐいちの意味、和歌山弁といえるのかどうか、語源、使い方の作例、言い換え、和歌山県の方言アーカイブでの扱いまでを、辞書と公的資料で確認できた範囲に絞って整理します。
最後まで読むと、「方言だと思っていた言葉」を調べるときの確かめ方も分かります。
和歌山で育つと「ぐいち」は当たり前の言葉なので、方言だと思っている人も、標準語だと思っている人もいます。辞書を引いてみると、どちらの感覚も半分ずつ当たっているのが面白いところです。
ぐいちの意味は「互い違い・食い違い」|和歌山弁で使う場面
ぐいちの意味は、「互い違いになっていること」「食い違っていること」「ちぐはぐなこと」です。和歌山弁として紹介されることもありますが、まずは辞書の語釈を押さえておきましょう。

辞書に載っている「ぐいち」の2つの意味
コトバンクの「五一(ぐいち)」には、デジタル大辞泉と精選版日本国語大辞典の語釈が載っています。内容を整理すると次のとおりです。
| 辞書 | 1つ目の意味 | 2つ目の意味 |
|---|---|---|
| デジタル大辞泉 | 双六やばくちで、さいの目の五と一とが出ること | 食い違っていること。互い違いであること |
| 精選版 日本国語大辞典 | 双六や賭博でいう語。賽の目が五と一と出ること。また、その賽の目 | 食い違っていること。ちぐはぐであること。互い違いになっていること。交互 |
ふだんの会話で使うのは2つ目の意味です。ボタンの掛け違いのように、そろうはずのものが一つずつずれている状態を指すときにぴったりはまります。
和歌山で「ぐいち」が出てきやすい場面(作例)
辞書の意味から考えると、ぐいちは次のような場面で使えます。以下は当サイトが意味に沿って作った作例で、公的な資料に載っている用例ではありません。
- シャツやパジャマのボタンを一段ずつ掛け違えているとき
- 靴下や箸など、対になるものの組み合わせが合っていないとき
- 棚板やタイル、ブロックの継ぎ目がずれているとき
- 話や段取りがかみ合っていないとき
ぐいちは和歌山弁?方言かどうかを公的資料で確認
結論からいうと、ぐいちは和歌山でも使われますが、和歌山だけの方言とは言い切れない言葉です。確認できた事実を順に並べます。

国語辞典に見出しがある=全国共通の語彙
デジタル大辞泉と精選版日本国語大辞典は、どちらも共通語の国語辞典です。そこに「五一」が見出し語として立っているので、成り立ちとしては地域限定の方言ではありません。
Weblio辞書の「ぐいち」を見ても、掲載元はデジタル大辞泉・実用空調関連用語・隠語大辞典の3つで、和歌山弁の辞書からの掲載は確認できませんでした。
和歌山県の方言アーカイブでは掲載を確認できず
和歌山県は和歌山県文化情報アーカイブ「和歌山の方言」で、県内の方言を文字と音声で公開しています。運営は和歌山県企画部企画政策局文化学術課です。
当サイトが2026年10月に、このアーカイブのトップ・地域別・解説の各ページと、50音順ページの一部を確認したところ、「ぐいち」の掲載は見当たりませんでした。
「地元でよく使うので方言に感じる言葉」と考えるのが自然
個人のブログなどでは、ぐいちを大阪や奈良の言葉として紹介している例も見かけます。ただし、どの地域でどのくらい使われているかを示す公的な調査結果は、今回確認できませんでした。
そのため当サイトでは、ぐいちを「辞書に載っている共通の言葉だが、使う地域と使わない地域があり、和歌山では日常語として残っている言葉」として紹介します。使用地域の範囲を断定することは控えます。
ぐいちの語源|さいころの「五」と「一」が由来
ぐいちの語源は、さいころの目の「五(ぐ)」と「一(いち)」です。なぜそれが「食い違い」の意味になったのかを、辞書の説明に沿って見ていきます。

五と一は「向かい合わない目」
デジタル大辞泉は、2つ目の意味の由来を「さいころの目は五と一とは対面していないところから」と説明しています。
さいころは向かい合う面の目を足すと七になる作りなので、一の裏は六、五の裏は二です。五と一は表と裏の関係にならない組み合わせであることから、「かみ合わない」「食い違う」という意味に広がったとされています。
江戸時代の浄瑠璃にも登場する古い言葉
精選版日本国語大辞典は、2つ目の意味の用例として浄瑠璃「菅原伝授手習鑑」(1746年)の一節を挙げています。歯が「五一(グイチ)に生えた」、つまり互い違いに生えたという使い方です。
少なくとも江戸時代の中ごろには、いまと同じ「互い違い」の意味で使われていたことが分かります。最近できた若者言葉でも、和歌山で生まれた言葉でもありません。
「五」を「ぐ」と読むのは双六・ばくちの言い方
辞書の1つ目の意味にあるとおり、ぐいちはもともと双六やばくちで目を呼ぶときの言葉です。それ以上の細かな成り立ち(なぜ「ご」ではなく「ぐ」なのか等)は、今回確認した辞書には説明がなかったため、ここでは触れません。
ぐいちの使い方と例文|和歌山弁風の作例つき
ぐいちは「ぐいちになる」「ぐいちや」の形で、名詞のように使うのが基本です。ここでは場面別に例文を紹介します。
| 場面 | 例文(作例) | 共通語での意味 |
|---|---|---|
| 服のボタン | ボタン、ぐいちになってるで | ボタンを一つずつ掛け違えているよ |
| 靴下 | その靴下、右と左でぐいちやん | その靴下、左右がそろっていないよ |
| 棚・DIY | 棚板の穴がぐいちで、ねじが入れへん | 棚板の穴がずれていて、ねじが入らない |
| 並べ方 | 椅子はぐいちに並べといて | 椅子は互い違いに並べておいて |
| 話のすれ違い | さっきから話がぐいちやな | さっきから話がかみ合っていないね |
「わざと互い違い」にも「うっかり食い違い」にも使える
精選版日本国語大辞典の語釈には「ちぐはぐ」と並んで「交互」も入っています。つまり、失敗してずれた状態だけでなく、意図して互い違いに配置する場合にも使える言葉です。
建築・設備の現場でも「ぐいち」と言う
Weblio辞書に収録されている実用空調関連用語では、ぐいちは現場用語として説明されています。2枚の板に開けた穴が何らかの影響でずれ、ボルトなどが通らなくなることを指すそうです。
家庭の「ボタンがぐいち」と、現場の「穴がぐいち」は、どちらも「合うはずのものがずれる」という同じ発想です。
ぐいちの言い換え・似た言葉との違い
ぐいちが通じなかったときは、「互い違い」「一つずつずれている」と言い換えれば伝わります。似た言葉との違いを表にまとめました。

| 言葉 | ニュアンス | ぐいちとの関係 |
|---|---|---|
| 互い違い | 交互に入れ違っている | 辞書の語釈そのもの。最も近い言い換え |
| 食い違い | 合うはずのものが一致しない | 辞書の語釈そのもの。話や意見にも使える |
| ちぐはぐ | そろっておらず調和しない | 精選版日本国語大辞典の語釈に含まれる |
| 掛け違い | ボタンなどを掛ける位置を間違える | ボタンの場面に限った言い換え |
県外の人に伝えるときのコツ
仕事や旅行先で使うなら、最初から「互い違い」「一段ずれている」と言うのが確実です。会話のネタにするなら、「漢字で五一と書く、さいころ由来の言葉」と語源まで添えると話が広がります。
同じ読みの別の意味もある
Weblio辞書の隠語大辞典の項目には、「くいち/ぐいち」の読みで「笑っていること」を指す隠語(犯罪語)も載っています。日常で使う「互い違い」の意味とは別物なので、混同しないようにしましょう。
和歌山の方言アーカイブで分かる和歌山弁の調べ方
「これは和歌山弁なのか」と気になったら、県が公開している資料で確かめるのがおすすめです。ぐいちを調べる過程で役立ったページを紹介します。

県内の旧50市町村を網羅した方言調査
和歌山の方言の解説ページによると、この調査は和歌山大学教育学部の柏原卓教授が監修し、語彙449項目、語法・表現53項目について行われました。紀北17・紀中16・紀南17の旧50市町村すべてを対象にしています。
地域別のページでは、紀北方言・紀中方言・紀南方言の3つに分けて、共通語と比べながら文字と音声で確認できます。
同じ県内でも言い方が変わる例
解説ページでは、蒲鉾(かまぼこ)の言い方が例に挙げられています。「イタ」「イタヤキ」は紀北に、「ナンバヤキ」は紀中の一部に分布するとのことです。
50音順のページには「キンノ・キンノー(昨日)」「クチナワ・クチナー(蛇)」といった語も載っています。和歌山弁かどうか迷ったら、まず県のアーカイブと国語辞典の両方を引くのが確実です。
「方言だと思っていたら辞書に載っていた」言葉は珍しくない
ぐいちのように、古くからある言葉が一部の地域の日常会話にだけ残り、方言のように感じられることがあります。逆に、標準語だと思っていた言葉が地域限定だったという場合もあります。
和歌山弁全体の特徴や代表的な言い回しは、和歌山の方言の一覧記事でまとめています。
ぐいちの基本情報まとめ表
ここまでの内容を、辞書と公的資料で確認できた事実だけで一覧にします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 読み | ぐいち |
| 漢字 | 五一 |
| 意味 | 食い違っていること。互い違いであること。ちぐはぐであること |
| もとの意味 | 双六やばくちで、さいころの目の五と一が出ること |
| 語源 | さいころの五と一が対面していないことから(デジタル大辞泉) |
| 古い用例 | 浄瑠璃「菅原伝授手習鑑」(1746年) |
| 和歌山弁かどうか | 和歌山でも使われるが、国語辞典に載る言葉。県の方言アーカイブでは掲載を確認できず |
| 使用地域の範囲 | 公的な調査結果は未確認(要確認) |
| 言い換え | 互い違い、食い違い、ちぐはぐ、掛け違い |
ぐいちとあわせて読みたい和歌山弁の記事
ぐいちが気になった方は、ほかの和歌山の言葉も調べてみると発見があります。
よくある質問
ぐいちは和歌山弁ですか?
和歌山でも耳にする言葉ですが、和歌山だけの方言とは言い切れません。「五一(ぐいち)」としてデジタル大辞泉や精選版日本国語大辞典に載っている言葉で、意味は「食い違っていること・互い違いであること」です。和歌山県文化情報アーカイブの方言ページ(当サイトが確認した範囲)には掲載が見当たりませんでした。
ぐいちの意味を一言でいうと何ですか?
「互い違い」「食い違い」「ちぐはぐ」です。辞書では、さいころの五と一の目が出ることが第一の意味、そこから転じた「食い違っていること。互い違いであること」が第二の意味として載っています。
ぐいちの語源は何ですか?
さいころの目の「五(ぐ)」と「一(いち)」です。デジタル大辞泉は、さいころの五と一は対面していないところから、食い違っていることを指すようになったと説明しています。
ぐいちを漢字で書くとどうなりますか?
「五一」と書きます。コトバンクでも「五一(グイチ)」の見出しで掲載されています。日常ではひらがなで「ぐいち」と書くことが多い言葉です。
ぐいちは県外の人に通じますか?
辞書に載っている言葉ですが、日常語として使わない地域の人には通じないことがあります。通じなかったときは「互い違い」「一つずつずれている」と言い換えると伝わります。
まとめ|ぐいちは和歌山でも使う「五一」由来の言葉
- ぐいちの意味は「互い違い・食い違い・ちぐはぐ」
- 漢字は「五一」。さいころの五と一が向かい合わないことが語源
- 1746年の浄瑠璃に用例がある古い言葉で、国語辞典に載っている
- 和歌山でも使うが、県の方言アーカイブでは和歌山特有の方言としては確認できなかった
- 通じないときは「互い違い」「一つずつずれている」と言い換える
次は、和歌山らしさがよく出る一人称を取り上げたあがらの意味の記事もあわせてどうぞ。




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