「和歌山って山本さん多いよね」「玉置は“たまき”って読むんやで」。和歌山で暮らしていると、苗字にまつわる会話が自然と生まれます。県外から来た方が「たまおき」と読んでしまうのは、地元民なら一度は見た光景です。
いざ「和歌山に多い苗字は何か」「自分の苗字のルーツは和歌山なのか」と調べ始めると、サイトごとに順位や人数が違い、由来も諸説あって、どれを信じてよいか分からなくなります。
実は和歌山は、全国有数の大姓「鈴木」の発祥地とされ、海南市の藤白神社には「鈴木屋敷」という鈴木さんの聖地が残っています。苗字の由来をたどると、そのまま熊野古道や湯浅の町並みへの小旅行につながるのが、和歌山の面白いところです。
この記事では、和歌山に多い苗字の参考ランキング、鈴木・湯浅・楠本・玉置・雑賀など和歌山らしい苗字の由来、そしてゆかりの神社や町を、自治体や神社の公式資料で確認できた範囲でご紹介します。読み終えるころには、週末に訪ねたい場所がひとつ増えているはずです。
和歌山に多い苗字ランキング【参考値】山本・田中・中村が上位
和歌山県で多い苗字は、1位が山本、2位が田中、3位が中村という順で、全国的にも多い苗字が上位を占めています。ただし、苗字別の人数は国勢調査などの公的統計として公表されていないため、順位や人数は民間データベースの推計に頼るしかありません。
ここでは、名字専門サイト「名字由来net」の和歌山県ランキング(同サイトによると2026年4月時点の政府発表統計と電話帳データをもとにした独自算出。2026年9月25日閲覧)を参考値として掲載します。サイトや算出時期によって順位や人数は変わるので、目安としてご覧ください。
| 順位 | 苗字 | 推定人数(参考値) |
|---|---|---|
| 1位 | 山本 | 約17,800人 |
| 2位 | 田中 | 約12,200人 |
| 3位 | 中村 | 約7,300人 |
| 4位 | 松本 | 約7,100人 |
| 5位 | 前田 | 約6,500人 |
| 6位 | 林 | 約6,300人 |
| 7位 | 谷口 | 約6,200人 |
| 8位 | 岡本 | 約6,100人 |
| 9位 | 宮本 | 約5,700人 |
| 10位 | 木村 | 約5,400人 |
| 11位 | 吉田 | 約5,200人 |
| 12位 | 山田 | 約5,100人 |
| 13位 | 坂本 | 約5,000人 |
| 14位 | 鈴木 | 約4,600人 |
| 15位 | 橋本 | 約4,500人 |
| 16位 | 井上 | 約4,500人 |
| 17位 | 森 | 約4,400人 |
| 18位 | 玉置 | 約4,400人 |
| 19位 | 山崎 | 約4,400人 |
| 20位 | 久保 | 約4,400人 |
出典:名字由来net「和歌山県名字ランキング」(2026年4月時点データ・2026年9月25日閲覧)。民間推計のため参考値です。
この表で注目したいのは、14位の鈴木と18位の玉置です。鈴木は東日本に圧倒的に多い苗字ですが、発祥地とされる和歌山でも上位に入っています。玉置は全国的には珍しい苗字でありながら、和歌山では20位以内に入る「地元色の強い苗字」の代表格です。谷口・岡本・宮本・坂本といった「本」「口」の付く苗字が多いのも、和歌山の名字分布の特徴といえます。

和歌山らしい苗字①「鈴木」は海南市・藤白が発祥の地
全国に広がる鈴木姓のルーツは、和歌山県海南市の藤白神社にあります。海南市の公式サイトによると、藤白の鈴木氏は平安時代の終わりごろに熊野から藤白の地に移り住み、ここを拠点として全国に熊野信仰を広めました。
「鈴木」という文字の由来について、藤白神社の公式サイトでは次のように説明されています。神武天皇東征のとき、鈴木家の祖先が天皇に稲を献じて「穂積」の姓を賜りましたが、この地では稲を積み重ねたものを「すずき」と呼んだことから「鈴木」になったといわれています。別説として、熊野権現の神木ナギの枝に鈴を付けて天皇一行を案内したことに由来するという伝承も紹介されています。
藤白の鈴木氏は、上皇などが熊野参詣をする際の接待を行うとともに、全国に3,300あるといわれる熊野神社の建立に関わり、熊野信仰とともに鈴木姓を各地へ広げていきました。東日本に鈴木さんが多いのは、この布教の歴史と深く関係していると藤白神社は説明しています。
藤白神社の境内にある鈴木屋敷は、藤白鈴木氏がかつて暮らした屋敷です。海南市によると、1,969平方メートルの敷地に座敷棟・玄関棟などの建物と池泉庭園、前庭があり、建物の一部は江戸時代後期、池泉庭園は室町時代末ごろに造られたと考えられています。敷地は「藤白王子跡」として国の史跡に指定されています。1998年には第1回の全国鈴木サミットが開かれ、2024年の第8回まで続いています。

和歌山らしい苗字②「湯浅」「楠本」は湯浅党と有田の地名から
「湯浅」は、有田郡湯浅町の地名がそのまま苗字になった典型的な地名由来の苗字です。湯浅町の公式サイトによると、湯浅氏は藤原鎌足の子孫・藤原秀郷の後裔と称し、居住していた地名から湯浅氏と名乗るようになったとされています。
湯浅という地名そのものの由来も興味深く、湯浅町は「水(ゆ)が浅く広がっていたことから『ゆあさ』の名がついたとも、古名『温笠(ゆかさ)』から転じたともいわれています」と説明しています。湯浅は熊野参詣の重要な宿所となった町で、醤油が商品として誕生したふるさとでもあります。
湯浅氏を中心とした武士団は「湯浅党」と呼ばれ、湯浅町によると南北朝時代まで実に300年にわたって勢力を誇りました。有田川町の公式サイトでは、湯浅党を「湯浅氏を中心とした武士団の総称」と説明し、血縁のある同族と、婚姻や養子で結びついた複数の家が連携して形成されていたと解説しています。湯浅城跡と藤並館跡は「湯浅党城館跡」として、令和3年(2021年)3月26日に国の史跡に指定されました。
「楠本」については、民間の名字データベースで湯浅氏の一族から分かれた苗字のひとつとされ、有田郡有田川町には楠本という地名も残っています。ただし、自治体などの公的資料で確認できたのは湯浅党の存在と城館跡までで、楠本姓の出自そのものを裏付ける公式記述は今回見つけられませんでした。ご自身のルーツとして調べる場合は、有田川町や湯浅町の町史をあたるのが確実です。
旅行者が湯浅氏のゆかりを感じるなら、湯浅町の重要伝統的建造物群保存地区(醤油蔵が並ぶ町並み)と、有田川町の湯浅党城館跡の組み合わせがおすすめです。町並み散策と史跡めぐりを半日で回れます。

和歌山らしい苗字③「玉置」は玉置山・玉置神社が名の由来
「玉置」は、和歌山では「たまき」と読むのが一般的で、先ほどの参考ランキングでも県内18位に入る、和歌山を代表する苗字です。県外では「たまおき」と読まれることが多く、和歌山あるあるとしてよく話題に上ります。
玉置の名は、紀伊半島の山深くに鎮座する玉置山・玉置神社と結びついて語られます。玉置神社の公式サイトによると、神社は大峰山脈の南端に位置する標高1,076メートルの玉置山の山頂近くに鎮座し、紀元前37年、第10代崇神天皇の御代に王城火防鎮護と悪魔退散のため早玉神を祀ったことに始まると伝えられています。
玉置神社は古くから熊野から吉野に至る熊野・大峰修験の行場のひとつとされ、平安時代には神仏混淆となって玉置三所権現、または熊野三山の奥院と称されて霊場として栄えました。奈良県観光公式サイトでは、社殿がなく神体である玉石そのものに礼拝する古代の信仰様式を残す「玉石社」が玉置神社の基になったと説明しています。
玉置神社の所在地は奈良県吉野郡十津川村玉置川1で、行政区分としては奈良県ですが、熊野三山の奥宮という位置づけからも分かるように、文化的には熊野・和歌山と一体の信仰圏です。和歌山県内では新宮市や田辺市本宮町など熊野エリアに玉置姓が根づいており、熊野本宮大社から車で向かう参拝ルートが定番です。山道が続くため、参拝前に公式サイトで道路状況を確認してください。

「雑賀」「熊野」など和歌山の地名由来の苗字と訪ねられる場所
和歌山の珍しい苗字の多くは、土地の名前がそのまま苗字になった「地名由来」です。そのため、苗字の由来をたどる旅は、そのまま和歌山の名所めぐりになります。ここでは旅行者が実際に訪ねられる場所を苗字ごとに整理しました。
| 苗字 | 由来とされる土地 | 訪ねられる場所 |
|---|---|---|
| 鈴木 | 海南市藤白(熊野から移住) | 藤白神社・鈴木屋敷 |
| 湯浅 | 有田郡湯浅町 | 湯浅の伝統的町並み・湯浅党城館跡(有田川町) |
| 玉置 | 玉置山・玉置神社(十津川村) | 玉置神社・熊野本宮大社 |
| 雑賀 | 和歌山市雑賀崎周辺 | 雑賀崎灯台・番所庭園 |
| 熊野 | 熊野地方(新宮・田辺・那智勝浦) | 熊野三山 |
「雑賀(さいか)」は和歌山市の雑賀崎とつながる苗字で、戦国時代の鉄砲集団・雑賀衆の名でも知られています。和歌山市の公式サイトによると、雑賀崎は万葉集に歌われるほど古くからの景勝地で、日本遺産「絶景の宝庫 和歌の浦」を構成する絶景のひとつです。かつての雑賀崎の漁師は九州・五島列島や房総半島など各地の海を自由に走り回り、独自の「一本釣り」をあみ出したと紹介されています。斜面に家々が連なる景観から「日本のアマルフィ」とも呼ばれ、雑賀崎灯台・展望広場や番所庭園、鮮魚の船上直接販売が見どころです。
「熊野」は熊野地方の地名に由来すると考えられる苗字です。熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社の熊野三山は、玉置神社が「奥院」と称された本体にあたり、苗字のルーツをたどる旅の締めくくりにふさわしい場所です。

和歌山の苗字の由来を自分で調べる方法とゆかりの地の基本情報
「自分の苗字は和歌山発祥なのか」を確かめたいなら、民間のランキングサイトで当たりをつけ、公的資料で裏を取るという二段構えが確実です。民間データベースは分布を知るのに便利ですが、由来の記述はサイトごとに異なり、出典が示されていないことも少なくありません。
公的資料として頼りになるのは、次の3つです。
- 市町村史・県史:和歌山県立図書館や各市町村の図書館で閲覧できます。湯浅氏や雑賀衆のように武士団の歴史がある苗字は、中世の章に記述があることが多いです。
- 自治体の文化財・歴史ページ:今回参照した湯浅町「湯浅町の歴史」、有田川町「国史跡湯浅党城館跡」、海南市「鈴木屋敷」のように、自治体サイトに由来の一次情報が載っています。
- 神社・寺院の公式サイト:藤白神社や玉置神社のように、苗字と結びついた社家や氏神の由緒を公式サイトで公開している神社があります。
地名由来の苗字であれば、和歌山県内に同じ字の地名が残っているかを地図で探すのも有効です。玉置川(十津川村)、楠本(有田川町)、雑賀崎(和歌山市)のように、地名が現役で残っていれば、実際に訪ねてルーツの土地を歩くことができます。
鈴木屋敷(藤白神社)の基本情報とアクセス
苗字ルーツの旅で最初に訪ねたいのが、海南市の鈴木屋敷です。海南市公式サイトで確認できた基本情報をまとめました。最新の公開日・料金は公式サイトでご確認ください。
| 名称 | 鈴木屋敷(藤白神社境内・国史跡 藤白王子跡) |
|---|---|
| 住所 | 和歌山県海南市藤白486番地 |
| 見学料金 | 500円(海南市公式サイトより。最新は要確認) |
| 公開時間・休館日 | 要確認(藤白神社 073-482-1123) |
| 駐車場 | 藤白神社内に完備 |
| アクセス | JR海南駅から徒歩約20分 |
| 公式URL | 海南市 鈴木屋敷 / 藤白神社 鈴木姓のルーツ |
湯浅・玉置・雑賀のゆかりの地については、以下の公式ページで最新情報を確認できます。
雑賀崎へは、和歌山市公式サイトによると車で阪和自動車道和歌山南スマートICから約20分、バスならJR和歌山駅から和歌山バス「市内雑賀崎循環線」で約35分です。

あわせて読みたい和歌山の地元ネタは、和歌山あるある、和歌山弁一覧、和歌山弁クイズでも紹介しています。
よくある質問
和歌山県で一番多い苗字は何ですか?
民間の名字データベース(名字由来net、2026年4月時点データ・2026年9月25日閲覧)の参考値では、1位が山本、2位が田中、3位が中村です。苗字別の人数は公的統計として公表されていないため、サイトや時期によって順位は変わります。
「玉置」は和歌山では何と読みますか?
和歌山では「たまき」と読むのが一般的です。玉置山・玉置神社(奈良県十津川村)と結びついて語られる苗字で、玉置神社は熊野三山の奥院と称された修験の霊場です。
鈴木姓の発祥が和歌山というのは本当ですか?
海南市と藤白神社の公式サイトによると、藤白の鈴木氏は平安時代の終わりごろに熊野から海南市藤白に移り住み、全国に熊野信仰を広めました。藤白神社境内の鈴木屋敷は国史跡「藤白王子跡」の一部で、全国鈴木サミットも開かれています。
自分の苗字の由来を調べるにはどうすればよいですか?
まず民間のランキングサイトで分布を確認し、次に県立図書館や市町村の図書館で市町村史・県史をあたる方法が確実です。湯浅町・有田川町・海南市のように、自治体の文化財ページに由来が載っている場合もあります。
鈴木屋敷の見学料金と行き方を教えてください。
海南市公式サイトによると見学料金は500円、JR海南駅から徒歩約20分、駐車場は藤白神社内にあります。公開日・時間は変更される場合があるため、藤白神社(073-482-1123)へご確認ください。
まとめ|和歌山の苗字は「土地の名前」そのもの
- 和歌山に多い苗字は山本・田中・中村が上位(民間データベースの参考値)。鈴木が14位、玉置が18位に入るのが和歌山らしい特徴
- 鈴木姓は海南市藤白が発祥とされ、藤白神社・鈴木屋敷が「鈴木さんの聖地」
- 湯浅は湯浅町の地名由来。湯浅党は300年続いた武士団で、湯浅党城館跡は国史跡
- 玉置は玉置山・玉置神社と結びつく苗字で、和歌山では「たまき」と読む
- 由来は民間サイトで当たりをつけ、市町村史や自治体・神社の公式資料で裏を取るのが確実
苗字のルーツをたどると、藤白神社から熊野古道へ、湯浅の町並みから有田川の史跡へと、和歌山の歴史をなぞる旅になります。次の週末は、ご自身やご家族の苗字にゆかりのある場所を一か所選んで、訪ねてみてはいかがでしょうか。地元の言葉を知りたい方は、和歌山弁一覧もあわせてどうぞ。




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