和歌山といえば、みかんと梅と白浜のパンダ。県外の人に説明するとき、だいたいその3つで終わってしまいます。でも、いざ『和歌山って何があるん?』と聞かれて言葉に詰まった経験、県民なら一度はあるのではないでしょうか。
じつは毎日の食卓にある「醤油」も「鰹節」も、夏の定番「蚊取り線香」も、発祥は和歌山県です。しかも全国的にはほとんど知られていません。この記事では、和歌山発祥の意外なものを一覧表でまとめたうえで、それぞれの由来と「実際に訪ねられる場所」を、公的機関や観光協会が公開している情報に沿って紹介します。読み終わるころには、県外の友人に話したくなるネタが7つ以上手元に残るはずです。
和歌山発祥の意外なもの一覧|まず早見表で全体像
和歌山発祥といわれるものは、食文化・産業・技術の3方向に広がっています。まずは一覧で全体像をつかんでから、気になるものを下の各章で深掘りしてください。
| 発祥のもの | ゆかりの市町村 | キーワード |
|---|---|---|
| 醤油(醤油醸造) | 湯浅町 | 金山寺味噌の「溜まり」が原点 |
| 金山寺味噌 | 湯浅町・由良町 | 禅僧・覚心が宋から製法を伝来 |
| 鰹節(燻乾法) | 印南町 | 角屋甚太郎ら三漁民が全国へ伝授 |
| 蚊取り線香 | 有田市(旧・有田郡) | みかん農家・上山英一郎と除虫菊 |
| 紀州備長炭 | 田辺市秋津川 | ウバメガシと炭問屋・備中屋長左衛門 |
| 古式捕鯨 | 太地町 | 組織的な突き取り漁・日本遺産 |
| 高野豆腐・ごま豆腐 | 高野山(高野町) | 精進料理から生まれた保存食 |
| クロマグロの完全養殖(世界初) | 串本町(紀伊大島) | 近畿大学水産研究所「近大マグロ」 |
このうち、全国区の知名度がありながら「和歌山発祥」が知られていないワースト3が、醤油・鰹節・蚊取り線香です。順に見ていきます。

醤油発祥の地は和歌山県湯浅町|金山寺味噌から生まれた「最初の一滴」
和歌山発祥でもっとも生活に近いのが醤油です。きっかけは調味料そのものではなく、金山寺味噌をつくる過程でたまった液体でした。
湯浅町観光協会によると、建長元年(1249年)に宋へ渡った禅僧・覚心が持ち帰った味噌の製法が、現在の金山寺味噌の始まりとされています。金山寺味噌は夏野菜を塩漬けにして仕込むため、浸透圧で野菜から水分がにじみ出ます。この液汁こそが醤油の元祖といわれるもので、湯浅の人々が改良を重ねて今の醤油になりました。
商業としての出荷も湯浅が先でした。同協会は天文4年(1535年)に醸造家の赤桐三郎五郎が100石余りの醤油を漁船で大坂へ出荷したのが始まりと紹介しています。近世には人口1000戸ほどの町に92軒の醤油屋が並ぶほど栄え、平成29年(2017年)4月28日には「醤油醸造文化」が日本遺産に認定されました。
味噌の製法を伝えた覚心(のちの法燈国師)が開いたのが、由良町の興国寺です。和歌山県公式観光サイトの特集でも、興国寺で広まった味噌づくりが湯浅の清水と温暖な気候に出会って醸造業へ育った流れが紹介されています。湯浅の町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、歩くと今も醸造の香りが漂います。
鰹節発祥の地は和歌山県印南町|燻乾法を生んだ三漁民
だしの基本である鰹節も、和歌山発祥です。印南町の公式サイトは「印南町は『かつお節』の発祥地です」と明記しています。
1600年代半ば、印南の漁民・角屋甚太郎が、燻製で魚肉の水分を抜く燻乾法(くんかんほう)を試み、改良土佐節の製造法を開発しました。印南町は甚太郎を「土佐節の祖」と紹介しています。
すごいのは、その技術を囲い込まなかったことです。森弥兵衛は枕崎へ、印南與市(土佐與市)は伊豆・房総へ製法を伝授し、鰹節づくりは日本中に広がりました。かつお節発祥の地でありながら、現在の生産量日本一が鹿児島県というねじれは、この「伝えた側」の歴史があってこそです。角屋甚太郎の命日である10月4日には、三人と印南漁民をたたえる献花式が行われています。

蚊取り線香発祥の地は和歌山県有田市|みかん農家が世界を変えた
夏の必需品・蚊取り線香も和歌山生まれです。生み出したのは、有田のみかん農家の家に生まれた上山英一郎(1862〜1943年)。「金鳥」で知られる大日本除虫菊の創業者で、同社の前身である上山商店は1885年(明治18年)に和歌山県有田郡(現在の有田市)で創業しました。
きっかけは、福澤諭吉の紹介で知り合ったアメリカの植物会社経営者から除虫菊の種子を譲り受けたこと。もともとはみかんの輸出を広げるための交流でしたが、そこから殺虫剤の道に進みます。線香に除虫菊を練り込む着想から世界初の棒状蚊取り線香が生まれ、のちに現在おなじみの渦巻き型へ改良されたと伝えられています。渦巻き型のアイデアは妻の提案だったという逸話も残ります。各年号の詳細は大日本除虫菊(金鳥)公式サイトの沿革で最新の記載をご確認ください。
和歌山の気候がみかんにも除虫菊にも合っていたこと、そして「輸出で地域を豊かにしたい」という発想が重なって生まれた、きわめて和歌山らしい発明といえます。

紀州備長炭と古式捕鯨|田辺・太地が生んだ和歌山発祥の技術
食べ物以外にも、和歌山発祥の「技術」があります。代表が紀州備長炭と古式捕鯨です。
紀州備長炭の発祥は田辺市秋津川
最高級木炭として知られる紀州備長炭。農林水産省近畿農政局は、田辺市秋津川地区を「江戸時代から紀州備長炭の里として知られています」と紹介しています。備長炭という名は、江戸時代の田辺の炭問屋「備中屋長左衛門」に由来するといわれます。秋津川には道の駅「紀州備長炭記念公園」があり、炭焼きの歴史を学べます(開館時間・料金は公式サイトで最新をご確認ください)。
古式捕鯨の発祥は太地町
太地町は組織的な古式捕鯨が始まった町とされ、太地町公式サイトでも日本遺産「鯨とともに生きる」として発信されています。江戸時代初期に突き取り式の捕鯨が組織化され、のちに網を使う網取り式へ発展したと伝えられます。歴史の詳細は太地町立くじらの博物館(和歌山県東牟婁郡太地町太地2934-2/開館8:30〜17:00)で展示されています。

高野山生まれの精進食|高野豆腐とごま豆腐も和歌山発祥
スーパーに並ぶ高野豆腐。名前のとおり、ルーツは和歌山県の高野山です。凍り豆腐が高野山の寺院で保存食として広まり、「高野豆腐」の名で全国に定着したと伝えられています。
同じく高野山発祥とされるのがごま豆腐です。肉や魚を使わない精進料理のなかで、ごまと葛でたんぱく質と満足感を補う工夫から生まれました。高野山の宿坊では、今も精進料理の一品として供されます。宿坊の食事・宿泊料金は各寺院で異なるため、予約時に公式窓口でご確認ください。
高野山の歴史背景は高野山と空海の記事でも触れています。参拝とあわせて「食の発祥地」として歩くと、同じ奥之院でも見え方が変わります。

世界初のクロマグロ完全養殖も和歌山発祥|串本町・近大マグロ
和歌山発祥は昔話だけではありません。もっとも新しいものが「近大マグロ」です。
本州最南端の串本町・紀伊大島にある近畿大学水産研究所 大島実験場では、1970年の開設当初からクロマグロの養殖研究に取り組み、2002年に世界初となるクロマグロの完全養殖を達成しました。人工ふ化で育てた親魚から卵を得て、その卵から再び魚を育てる——32年がかりの研究が実を結んだ瞬間です。
串本は橋杭岩やダイビングで知られる町ですが、「世界の水産史が書き換わった場所」でもあります。串本観光とあわせて覚えておくと、現地の見え方が一段深くなります。あわせて串本の観光スポットもどうぞ。
和歌山発祥スポットの基本情報と訪ね方
一覧で挙げた発祥地のうち、実際に訪ねやすい場所をまとめました。料金・営業時間は変更されることがあるため、必ず各公式サイトで最新をご確認ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 湯浅(醤油発祥) | 和歌山県有田郡湯浅町。重要伝統的建造物群保存地区の町並みを散策。蔵の見学可否は各蔵で要確認 |
| 印南(鰹節発祥) | 和歌山県日高郡印南町。町公式サイトで三漁民の顕彰を紹介。毎年10月4日に献花式 |
| 有田(蚊取り線香発祥) | 和歌山県有田市。上山英一郎ゆかりの地。見学施設の有無・公開状況は要確認 |
| 田辺市秋津川(備長炭発祥) | 道の駅「紀州備長炭記念公園」。開館時間・料金は公式サイトで要確認 |
| 太地町(古式捕鯨発祥) | 太地町立くじらの博物館/太地町太地2934-2/8:30〜17:00/0735-59-2400/料金は公式サイトで要確認 |
| 串本町(近大マグロ) | 近畿大学水産研究所 大島実験場。一般見学の可否は要確認 |
| 公式サイト | 和歌山県公式観光サイト |
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よくある質問
和歌山発祥でいちばん意外なものは何ですか?
県外の方がもっとも驚くのは蚊取り線香です。みかん農家だった上山英一郎が除虫菊と出会い、有田(旧・有田郡)で事業化したことが始まりとされています。醤油や鰹節に比べて「和歌山」と結びつけて語られる機会が少ないため、話題にすると反応が良いテーマです。
醤油発祥の地はなぜ湯浅町なのですか?
金山寺味噌を仕込む過程でにじみ出た液体が醤油の元祖とされ、それを改良したのが湯浅の人々だったためです。湯浅町観光協会は、天文4年(1535年)に大坂へ出荷されたのが商業的な始まりと紹介しています。清らかな水と温暖な気候も醸造に適していました。
鰹節の発祥が和歌山なのに生産地が九州中心なのはなぜですか?
印南町の漁民が燻乾法を土佐や枕崎、伊豆・房総へ伝授したためです。技術が各地に根づき、その後の漁場や産業の条件に合った地域で生産が拡大しました。発祥地と現在の主産地が異なるのは、和歌山が「伝えた側」だったことの裏返しです。
和歌山発祥のものを1日で巡ることはできますか?
湯浅町(醤油)と有田市(蚊取り線香ゆかりの地)は隣接しており、海南・有田エリアで半日ほど。印南町や田辺市秋津川まで足を延ばすなら国道42号を南下するルートになります。太地町・串本町は紀南のため、1泊2日に分けるほうが無理がありません。
発祥の由来はすべて史実として確定していますか?
多くは自治体や観光協会が公表している伝承・記録に基づくもので、年代や経緯には諸説あるものもあります。本記事では公的機関・観光協会・企業公式の記載を出典としていますが、学術的な確定事項として断定はしていません。
まとめ
- 醤油と金山寺味噌の発祥は湯浅町。1249年に覚心が伝えた味噌製法が原点で、1535年に大坂へ出荷された記録が残ります
- 鰹節の発祥は印南町。角屋甚太郎らが燻乾法を生み、全国へ技術を伝授しました
- 蚊取り線香の発祥は有田市。みかん農家・上山英一郎と除虫菊の出会いが始まりです
- 紀州備長炭は田辺市秋津川、古式捕鯨は太地町。どちらも日本の産業史に残る技術です
- 高野豆腐・ごま豆腐は高野山の精進料理から。世界初のクロマグロ完全養殖は2002年、串本町の近畿大学水産研究所で達成されました
次に読むなら、発祥の味を実際に食べに行ける和歌山の名物グルメがおすすめです。




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