和歌山の親戚の家で、おばあちゃんに「はよ、しよし」と言われて、一瞬ひやりとした——そんな経験はないでしょうか。語尾が強く聞こえるぶん、怒られたのか、やさしく促されたのか、判断がつきません。返事を間違えたくないからこそ「しよし 和歌山弁 意味」と調べたくなります。
じつは「しよし」は和歌山県の公式方言アーカイブの語彙一覧を探しても出てきません。載っていないのは使われていないからではなく、「しよし」が単語ではなく動詞の活用(文法のかたち)だからです。
この記事では、「しよし」の意味とニュアンス、「しよし」の「し」の正体、動詞ごとの作り方一覧、京都弁の「しよし」との違い、県内の地域差、言われたときの返し方までをまとめます。読み終わるころには、「しよし」が命令なのか勧めなのかを、その場で聞き分けられるようになります。

しよしの意味は「〜しなさい」|和歌山弁のやわらかい命令
結論から書きます。和歌山弁の「しよし」は「しなさい」「してください」という意味です。形のうえでは命令ですが、実際の会話では「よかったらどうぞ」「そうしたら?」に近い、やわらかい勧めとして使われます。
たとえば「はよ、しよし」は「早くしなさい」。言葉だけを訳すと急かしているようですが、親が子どもに、年配の方が若い人に向けて使う場面が多く、強い叱責のニュアンスは薄いのが特徴です。初対面の相手に物をすすめるときにも使われます。
つまり「しよし」は、共通語の「しなさい」と「どうぞ」のあいだにある表現です。ここを押さえておくと、聞いたときの印象がずいぶん変わります。
「しよし」の「し」は「する」|〜よしの作り方と活用一覧
この見出しがこの記事のいちばん大事な部分です。「しよし」は「し」+「よし」に分けられます。この「し」は、動詞「する」の連用形(「し-ます」の「し」)です。だから「しよし」は「する」+「よし」で「しなさい」になります。
ここから先がおもしろいところで、「よし」はどんな動詞の連用形にもくっつきます。連用形とは、「〜ます」を付けたときの形のことです。
| 共通語 | 連用形(〜ます) | 和歌山弁 | 意味 |
|---|---|---|---|
| する | し-ます | しよし | しなさい |
| 食べる | 食べ-ます | 食べよし | 食べなさい |
| 見る | 見-ます | 見よし | 見なさい |
| 書く | 書き-ます | 書きよし | 書きなさい |
| 行く | 行き-ます | 行きよし | 行きなさい |
| 飲む | 飲み-ます | 飲みよし | 飲みなさい |
| 座る | 座り-ます | 座りよし | 座りなさい |
| 聞く | 聞き-ます | 聞きよし | 聞きなさい |
| 寝る | 寝-ます | 寝よし | 寝なさい |
| 来る | 来(き)-ます | 来(き)よし | 来なさい |
この表のとおりなので、「よし」の形を一つ覚えれば、動詞を入れ替えるだけで無限に作れます。「宿題しよし」「ゆっくり食べよし」「そこ座りよし」と、聞こえ方がすべて同じ系統になるのは、同じ文法のかたちを使っているからです。
なお「やめときよし(やめておきなさい)」のように、「〜とく」を挟むと、やめるほうを勧める言い方になります。語尾に「よ」を足した「食べよしよ(食べなさいね)」は、さらに角が取れた響きになります。

しよしの使い方|和歌山弁の例文で場面ごとに確認する
意味と作り方がわかったら、あとは場面です。実際に和歌山で耳にしやすい言い方を、場面別に並べます。
| 場面 | 和歌山弁 | 共通語訳 |
|---|---|---|
| 急かす | はよ、しよし | 早くしなさい |
| すすめる | これ、食べよしよ | これ、食べなさいね |
| 席をすすめる | そこ、座りよし | そこに座りなさい |
| やめさせる | そんなん、やめときよし | そんなことはやめておきなさい |
| 気づかう | 早めに寝よし | 早めに寝なさい |
| 誘う | 一回、来(き)よし | 一度、来なさい(来たらいいよ) |
並べてみると、相手のためを思って言う場面がほとんどだと気づきます。これが「しよし」が強い命令に聞こえない理由です。逆に、本気で怒っているときの和歌山弁は「よし」ではなく、もっと短い言い方になります。
しよしは命令か勧めか|意味の見分け方3つ
「〇〇よし」には、「〇〇したら?」という提案型と、「〇〇しなさい!」という命令型の二つの読み方があり、どちらになるかはその場のニュアンスで決まります。見分けるポイントは次の3つです。
- 「はよ」が付いているか:「はよ、しよし」のように副詞で急かしていれば、命令寄りです。
- 語尾に「よ」「な」が付くか:「食べよしよ」「やめときよしな」と伸びるときは、勧め・気づかい寄りです。
- 目の前に物があるか:お菓子やお茶が差し出されていれば、ほぼ100%「どうぞ」の意味です。
京都弁の「しよし」との違い|和歌山弁でも使う言葉
「しよし」を検索すると京都弁の解説が多く出てきます。これは間違いではありません。「〜しよし」は京都でも和歌山でも使われる表現で、どちらか一方の専売特許ではないのです。
違いが出るのは、周りに付く言葉とイントネーションです。京都では「おしよし」「〜やし」といった京ことばの語彙と組み合わさり、やわらかさがさらに強調されます。いっぽう和歌山では、「〜やんか」「〜ら」「〜よら」といった紀州弁らしい語尾と並ぶため、同じ「しよし」でも歯切れよく、少しぶっきらぼうに聞こえます。
| 比較項目 | 和歌山弁の「しよし」 | 京都弁の「しよし」 |
|---|---|---|
| 意味 | しなさい/どうぞ | しなさい/どうぞ |
| よく組む語尾 | 〜よ、〜な、〜ら、〜やんか | 〜え、〜やし、〜はる |
| 聞こえ方 | 歯切れよく、やや直球 | やわらかく、まわりくどい |
| 使う人 | 年配層・女性に多い | 年配層・女性に多い |
和歌山県北部(紀北)は地理的に大阪・奈良と、さらにその先の京都と行き来が深い地域です。「しよし」が両方で生きているのは、こうした言葉のつながりの名残だと考えると納得しやすくなります。

和歌山県内の地域差|紀北・紀中・紀南で聞こえ方が変わる
和歌山弁はひとつではありません。和歌山県の公式サイトでも、和歌山の方言として「県内でも地域により異なる方言」を文字と音声で公開しており、地域別・50音順・方言会話文の3つの切り口で整理されています。平成22年度の調査がもとになっている点も明記されています。
一般には、県内の方言は次の3つに分けて語られます。
- 紀北(和歌山市・岩出市・紀の川市・橋本市など):大阪弁に近く、「しよし」も比較的よく通じます。
- 紀中(有田・日高・御坊市など):疑問の「〜け」が多用されるのが特徴とされ、「御坊弁」と呼ばれることもあります。
- 紀南(田辺市・新宮市・串本町など):古い京阪式アクセントを残すとされ、紀北とはアクセントの印象が大きく変わります。
あわせて紀州弁の代表的な特徴として、ザ行・ダ行・ラ行が入れ替わる「ザダラ変換」がよく挙げられます。「全然→でんでん」「座布団→だぶとん」「銅像→どうどう」のような言い替えです。「しよし」のような文法のかたちと、この音の特徴が重なることで、和歌山弁らしさが生まれます。
実際の音を聞いてみたい方は、県公式の方言会話文8選が便利です。和歌山市・御坊市・新宮市・那賀・田辺の会話が音声付きで公開されているので、同じ県内でもどれだけ違うかが一度で分かります。
方言の地理的な広がりに興味が出たら、国立国語研究所『日本言語地図』も公開されています。全国約2,400地点を1957〜1964年に調査した300枚の地図で、言葉がどう分布しているかを地図で確認できます。
しよしと一緒に覚えたい和歌山弁
「しよし」だけ覚えても会話は続きません。和歌山で一緒に飛んでくる言葉を、意味とセットで押さえておきましょう。
| 和歌山弁 | 意味 | 使い方の例 |
|---|---|---|
| あがら | 私たち | あがらも行くんよ |
| 〜よら/〜ら | 〜だよ(断定) | そこらにおらら |
| 〜け | 〜なの?(疑問) | もう帰るんけ |
| キンノー | 昨日 | キンノーは、ほんまにおおきによ |
| クチナワ | 蛇 | そこらへんには、クチナワおらら |
| サイラ | 秋刀魚 | 今晩、サイラの塩焼きすら |
| ソコマメ | 落花生 | ソコマメ、食わんか? |
「キンノー」「クチナワ」「サイラ」「ソコマメ」は、いずれも和歌山県公式の方言アーカイブ50音順に例文付きで掲載されている言葉です。一方で「しよし」は同じ一覧に見当たりません。冒頭で触れたとおり、語彙ではなく活用のかたちだからです。方言の一覧表を探しても「しよし」が出てこない理由は、ここにあります。
「しよし」の基本情報
| 言葉 | しよし(〜しよし/〜よし) |
|---|---|
| 読み | しよし |
| 意味 | しなさい/してください/そうしたら? |
| 品詞・構成 | 動詞の連用形+「よし」(「し」は「する」の連用形) |
| ニュアンス | 形は命令、実質はやわらかい勧め |
| 使う人 | 年配層・女性に多いとされる |
| 主な使用地域 | 和歌山県(とくに紀北)、京都など近畿一帯 |
| 関連表現 | 食べよし/見よし/やめときよし/食べよしよ |
| 公式参考 | 和歌山県「和歌山の方言」(50音順一覧には未掲載) |
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方言を覚えたら、現地で使ってみるのが一番です。旅行の計画は和歌山県公式観光サイトでエリアごとの最新情報を確認してください。

よくある質問
「しよし」と言われたら怒られているのですか?
多くの場合、怒られてはいません。「しよし」は形のうえでは命令ですが、実際にはやわらかい勧めとして使われます。目の前に食べ物やお茶が差し出されていれば「どうぞ」の意味です。ただし「はよ、しよし」のように「はよ(早く)」が付くときは、急かされていると受け取ってください。
「しよし」は和歌山弁ですか、京都弁ですか?
どちらでも使われます。「〜しよし」は京都だけの言い方ではなく、和歌山でも使われる近畿一帯の表現です。意味はほぼ同じで、違いは組み合わさる語尾やイントネーションに出ます。和歌山では歯切れよく、京都ではよりやわらかく聞こえる傾向があります。
「しよし」と言われたら、どう返せばいいですか?
すすめられている場面なら「ありがとう、いただきます」で十分です。和歌山弁で返したいときは「おおきに(ありがとう)」が自然です。断りたいときも「よし」はきつい命令ではないので、「気持ちだけいただきます」で問題ありません。無理に方言で返す必要はありません。
「しよし」は和歌山の若い人も使いますか?
使う人は年配層や女性に多いとされ、若い世代では「〜しや」「〜して」に置き換わる場面が増えています。ただし祖父母世代との会話や家庭内では今も生きた表現です。和歌山県の方言アーカイブも平成22年度の調査がもとになっており、世代による差があることを前提に見るとよいでしょう。
「しよし」以外の「よし」の形はどう作るのですか?
動詞に「〜ます」を付けた形(連用形)に「よし」を足すだけです。食べる→食べよし、見る→見よし、書く→書きよし、来る→来(き)よし、となります。「しよし」の「し」は「する」の連用形なので、同じルールで作られた一例にすぎません。
まとめ
- 和歌山弁の「しよし」は「しなさい」。ただし実際はやわらかい勧めで、強い叱責ではありません。
- 「しよし」の「し」は「する」の連用形。動詞の連用形+「よし」で、どの動詞でも作れます。
- 命令か勧めかは「はよ」の有無・語尾の「よ/な」・目の前に物があるかで見分けられます。
- 「しよし」は京都弁でも和歌山弁でも使われ、違いは語尾とイントネーションに出ます。
- 県内でも紀北・紀中・紀南で聞こえ方が変わるため、音声付きの県公式アーカイブで確かめるのが確実です。
次に読むなら和歌山弁一覧と和歌山弁クイズがおすすめです。意味を知った言葉を実際に聞き分けられるようになると、和歌山での会話が一気に楽しくなります。





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